※苔を採取できる場所は、自分の所有する土地か、採取が許可された場所だけです。それ以外で行うと違法行為となる可能性がありますので、採取の前にこちらの記事をご確認ください。
苔はネットでも簡単に購入できますが、「自分で採取した苔を育てたい!」という方も多いのではないでしょうか。
普段、通勤・通学で通っている道でも注意してよく見ると、鮮やかな緑色をした綺麗な苔が、立派なコロニーを築いていたりするからです。
しかし、苔を採取するには乗り越えなければならないハードルがいくつかあります。採取の許可はどこに問い合わせれば良いのか、どうやって採取をするのか、採取後の処置はどうするのか、など、難しい問題も多いため、苔の採取に必要な手順をすべてまとめてみました。
苔採取に最適な時期
基本的に時期はいつでも可能です。しかし、苔が元気な春から夏にかけての時期が最適といえるでしょう。また、雨上がりで地面が軽く湿っているときは苔が一番綺麗に見えます。
普段晴れているときには、カピカピに乾いて色は茶色くなっていて、「ここの苔は枯れているな…」と思っていても、雨上がりに行くと綺麗な新緑のふっくらとした苔になっていることが多々あります。
苔の採取に適した場所
実家や知り合いの敷地内
手軽に苔を採取したい場合は、実家や知り合いの敷地内が一番採取しやすいと思います。顔なじみの人であれば許可も簡単にとれるため、はじめての採取にはおすすめです。
家の庭やブロック塀などに生えている苔は乾燥や日差しに強い苔が多いです。主にギンゴケやホソウリゴケ、ハリガネゴケやスナゴケなどが一般的で、これらの複数種類が混ざった群落を形成していることもあります。
公園
許可が必要ですが、昔からある公園にはよく苔が生えています。木の根元付近や、直射日光の当たらない場所、水路のある場所などが狙い目です。
日向ではギンゴケやホソウリゴケ、木の近くの日陰ではコスギゴケ、水気の多い日陰ではゼニゴケやジャゴケなどがよく見られます。
川の土手
こちらも許可が必要ですが、川の水際付近を好む苔は多いため、群落をつくって大量に生えていることも珍しくありません。
水面近くではホソウリゴケやコツボゴケ、あまり水しぶきが当たらない場所ではハマキゴケやスナゴケなどがブロックにびっしりと生えていることがあります。
山林
個人や団体が所有している山林は許可がとりにくい場合が多いかもしれませんが、多くの種類の苔が山林に生育しています。
木漏れ日のさす明るい場所では、スギゴケやハイゴケ、ホソバオキナゴケやアラハシラガゴケなどが見られます。
また、光のあまり当たらない場所では、タマゴケやシノブゴケ、コスギゴケやシッポゴケなどが見つかるかもしれません。
特に近くに川がある場所では、苔が湿度を確保できるため、育成が盛んになっている場合が多いです。水気を好むコツボゴケやカサゴケ、ホウオウゴケやカマサワゴケなども見つけやすいはずです。
目当ての苔が生えていない場合は標高の違う山に足を運んでみましょう。苔は生息している山の標高によって種類が異なるため、場所を変えてみるのは非常に有効な手段といえます。
僕は以前、道端で美しいホソウリゴケの群生を見つけ、しばらく心を奪われていましたが、よく見るとすぐ隣に犬のフンが落ちてました。市街地での採取はあまりお勧めしません…。
苔採取の許可のとり方
正しい許可のとり方はネットで調べても微妙な記述ばかりで、地域によっても異なる可能性がありますが、まとめると以下のような感じになります。(未検証なので自己責任でお願いします。)
苔のある場所を探す
当たり前ですが、苔採取の許可は、目当ての苔がある場所の許可をとらなければ意味がありません。まずは、苔のある場所を見つけるのが先です。
近くの道路、公園、土手、水路、山、林などを探索してみましょう。ただし、山や林は私有地になっていることも多いため、足を踏み入れる前に必ず確認をするようにしましょう。
許可をとる
道路や公園、土手などの、市町村が管理している場所は、役所または役場に問い合わせます。管理事務所などが別にある場合は、そちらに問い合わせるほうがスムーズかもしれません。
また、公共の場ではない土地で、所有者が明確に分かっている場合は直接聞きに行くのも一つの方法です。ただし、個人宅などは許可してくれる人ばかりではないことを心得ておきましょう。
土地の所有者が分からない場合は、その地域の管轄の法務局に行くと分かるようです。どうしても許可がとりたい場合には、利用してみると良いかもしれません。
念のために…
携帯から電話で許可がとれる場合は、その内容を録音しておくと便利です。
日常生活で苔の採取をしている人はなかなか見かける機会が無いため、人によっては怪しいと思う人もいるかもしれません。また、警察に何をしているのかを聞かれることもあるかもしれません。
そのときは許可を得ているので堂々としていれば良いのですが、それを証明できるものがあると心強いです。担当者の方の名前も録音に残しておくと安心できます。
僕も機会があれば、許可とりから試してみようと思います!…と言いたいところですが、以前実家の庭で苔を採取した際に後処理が面倒だったことや、環境の変化ですぐに枯れてしまったことを思い出すと、かなり消極的になってしまいます…。
苔採取に使う道具
必須ではありませんが、次のような道具を持っていくとスムーズな採取ができるはずです。代用できるものがあればそれでも構いません。
霧吹き、ルーペ、ゴム手袋、ヘラ、ジップロック、保冷バッグ・保冷剤
霧吹き
霧吹きを持っていく理由は、雨上がりに採集に行く理由と同じです。晴れている日や、山林の木陰で雨が当たりづらい場所では湿った苔の状態が分かりにくい場合があります。
そんなときは霧吹きで水をかけて数分待ってみると、緑色の葉が開く元気な苔かどうかが分かります。
ルーペ
ルーペは、普段あまり馴染みがない方も多いかもしれませんが、苔の観察にはよく使われています。
苔の種類を同定[どうてい](種類を見極めること)する際に、葉の形や中肋[ちゅうろく](葉の中心軸)の長さなどを確認するときに便利です。
苔の観察に使用するルーペは、10倍程度が使いやすいとされています。大きすぎるとピントが合いにくく、どこを見ているのか分からなくなるため、大きくても15倍程度が良いでしょう。
ゴム手袋
主に市街地に生えている苔は、ゴミやヘドロ、蛾の幼虫やコバエの卵などが苔に付いている可能性があります。
見た目以上に汚い苔もありますので、ゴム手袋を装着してから扱うと良いでしょう。
ヘラ
山林の腐葉土の上に生えているような苔であれば手でも採取できますが、岩や樹皮、コンクリートなどに生えている苔は一筋縄にはいきません。
しっかりと仮根[かこん]でしがみついている場合が多いため、ヘラを使って採取するほうがラクに採れます。
ジップロック
ジップロックはタッパー状でも袋状でも構いませんが、苔が濡れていたり汚れていたりすることもあるため、密閉できる容器を用意しましょう。
保冷バッグ・保冷剤
小さな保冷バッグと保冷剤があると夏の採取に便利です。苔は湿った状態で高温になる蒸れを嫌うため、持ち帰る際に冷やしておけると安心できます。
山での採取はこれらの道具とは別に、登山の装備も忘れないようにしましょう!長袖・長ズボン・帽子・履きなれた靴・雨具・虫よけ・地図・コンパスなどなど。
苔の採取方法
特に細かいことを気にしなくても苔の採取はできますが、苔採取の手順をまとめました。
周りの安全を確認する
どこで採取するにしても、苔を探しながら歩いていると視野が狭くなってしまい、意外と周りの状況を見失いがちです。
市街地なら車の通る場所、水辺では川の流れ、山では崖など、普段は無意識的に注意できている場所でも、別のことに注意が向くと危険ですので、まずは安全かどうかを確認しましょう。
苔を観察する
霧吹きやルーペを使用して、苔の種類や状態を観察します。目当ての苔だけでなく、複数種類の苔が入り混じっているような群落もよくありますので、採取する前に確認しておきましょう。
雌雄異株[しゆういしゅ](雄株と雌株が別の個体に分かれているもの)の場合は、どちらか一方の採取では蒴[さく]が出ませんので、蒴を鑑賞したい場合は、どちらの株も採取できるのが望ましいです。(見分けるのが難しい場合も多いですが。)
苔の環境を確認する
苔の種類が同定できなくても、知っておきたいのは苔が自生していた環境です。具体的には、日差しが当たる場所なのか、水気の多い場所なのか、基物は何か、他にどんな苔が近くに生えているのか、などです。
複数の苔を採取する場合は後で分からなくなってしまうこともあるため、採取の前に携帯のカメラで、周りの状況を撮っておくと良いでしょう。
ヘラの取扱いに注意する
苔の採取にヘラなどを使用する場合は、基物を傷つけないように注意してください。特に木の樹皮や岩、コンクリートなどは傷が付きやすいです。
土地の所有者とのトラブルにもなりかねませんので、基物から擦り取るのではなく、苔の仮根を優しく外すようなイメージで取るようにしましょう。(仮根は切れても生長に支障はありません。)
採りすぎに注意する
苔は小さな植物ですが、生長にはとても長い時間を要するため、採りすぎには注意してください。苔が多く残っているほど再生する時間も早くなります。
必要な分量だけを採取するようにし、間違っても根こそぎ採っていくような行為は絶対に止めましょう。
苔は立派な自然の植物です。苔のある自然の風景は大切にしていきたいですね!
採取した苔の処置
野生の苔を採取してきた場合は、虫やカビ菌がついていることが多いです。そのため、植える前に殺虫・殺菌する必要があります。
苔の殺虫方法
殺虫スプレーを使う方法
袋に水性の殺虫スプレーを少しだけ撒き、その後、採取してきた苔を袋に入れて1日置いておくと、苔についた虫を駆除できます。(直接苔にスプレーしないでください。)
ただし、スプレーによっては効き目がない虫が潜んでいる可能性や、苔にダメージを与える可能性があるため、苔の様子を見ながら行ってください。
園芸用殺虫剤を使う方法
家庭園芸用の殺虫剤を使用する場合は、最初から全体に使わず、少量の苔で試してから使うようにしてください。苔に合わない場合もあるかもしれません。
また、日中の暑い時間帯に使用すると薬害が出る可能性もあるため、一日の涼しい時間帯に使用するようにしてください。
水につける方法
苔のコロニーを崩さないように水道水で優しく水洗いをした後、水を張ったバケツの中に苔を沈めて数日間待つと、中の虫が出てきます。
ただし、苔の種類によっては水の中でも生きていける苔もありますが、そうでない苔も多いですので、毎日状態を確認するようにしてください。苔の様子を見つつ、2~3日ほどつけておくと良いでしょう。
…実は、僕は「水につける方法」はあまり信用していません。ネットには「半日くらい水につけておけば大丈夫」との情報もあったため、一度、採取した苔を試しに24時間しっかりと水に沈めておいたことがあります。しかし、それでも足りなかったらしく、苔を植える際に、アリ2匹、トビムシ2匹、蛾の幼虫1匹が出てきました。おそらく、2~3日つけておいてもまだ中に虫がいる可能性はゼロではないと思いますので、他の方法と併用したほうが安全かもしれません。
苔の殺菌方法
園芸用殺菌剤を使う方法
家庭園芸用の殺菌剤は、様々な種類のカビに対応しているものが多いですが、殺虫剤と同様に、少量の苔で試してから使用するようにしましょう。
水で洗った後に乾燥させる方法
乾燥に強い苔に限りますが、苔を水道水でよく洗い、風通しの良い場所で一度乾燥させるとカビ対策になります。
直射日光に耐えられるスナゴケやギンゴケ、ホソウリゴケなどの苔の場合は、陽のあたる場所に置くのが効果的です。
殺菌には薄めた酢を推奨しているネットの情報もありましたが、酢で殺菌できるのは細菌だけで、カビ菌はむしろ餌にして繁殖しますのでご注意ください。
【最終手段】電子レンジで殺虫・殺菌する方法
ネットの情報ですが、洗った苔を耐熱のタッパー(ジップロックなど)に入れて2分ほど加熱するという方法がありました。
苔の種類や状態によって、レンジの熱に耐えられるものは変わってくると推測されますが、参考にした情報源の苔は問題なく育っていました。
このやり方は、なんだか苔が可哀想な気もしますが、他の方法もダメージがゼロではないため、元気に育つのであればアリな気がします。ただ、短時間とはいえ、蒸れに弱い苔が耐えられるかどうかは怪しいところですね。
まとめ
長くなりましたが、これは苔採取に気をつけるべきことが沢山あるということでもあると思います。
採取した後も、苔にとっては大きな環境の変化となるため、元気に育ってくれるかどうかは分かりません。それらのデメリットを踏まえた上で行う必要があります。(僕自身があまり苔の採取を推奨していないため、否定的なことばかり書いているような気もしますが…。)
苔の採取は魅力的ではありますが、ルールに則った上で、責任を持って行うようにしましょう。
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